店舗や部署からExcelを集め、集計用ファイルへコピーする。月に一度の作業でも、ファイルが増えるほど確認と修正に時間がかかります。
このように同じ形式のファイルを繰り返しまとめる仕事は、Power Queryで改善できる可能性があります。大がかりなシステム開発の前に試せる、現実的な選択肢です。
Power Queryで変えられること
Power Queryは、Excelの「データの取得と変換」に使われる機能です。元データへ接続し、不要な列の削除、データ型の変更、複数データの結合などを手順として保存できます。次回からは、同じ手順を一から繰り返すのではなく、データを更新して再実行できます。
Microsoftも、Power Queryの基本的な流れを「接続・変換・結合・読み込み」の4段階として説明しています。詳しい機能や対応環境は、Microsoft公式のPower Query解説で確認できます。
たとえば、次の作業が対象になります。
- 各店舗から届く月次売上ファイルを一つにまとめる
- 部署別の予算実績ファイルを全社集計へ追加する
- システムから出力したCSVを毎週同じ形に整える
- 商品コードを使って、別のマスターファイルから商品名を付ける
- 日付や金額の形式をそろえてから集計表へ読み込む
最も始めやすいのは「フォルダーから結合」
同じ列構成のファイルが複数ある場合は、専用フォルダーへファイルを置き、そのフォルダーをPower Queryの取得元にします。
基本的な流れは次のとおりです。
- 集計対象だけを入れるフォルダーを作る
- 各ファイルの列名とデータの形式をそろえる
- Excelの「データ」から「ファイル」「フォルダー」を選ぶ
- 対象ファイルを確認して「結合と変換」を選ぶ
- 不要な列の削除やデータ型の指定を行う
- 集計結果をワークシートまたはデータモデルへ読み込む
- 翌月はファイルを追加し、更新結果を確認する
Microsoftの公式手順でも、同じ構造の複数ファイルを一つのテーブルへまとめる方法が案内されています。
成功の鍵は、操作よりファイルの統一
Power Queryを設定しても、入力ファイルの形が毎回変わると更新に失敗します。先に次のルールを決めておく方が重要です。
列名を固定する
「売上」「売上金額」「金額」のような表記ゆれをなくします。列の順番が変わっても列名で対応できる場合がありますが、列名そのものが変わると別の項目として扱われます。
一つの列には一種類の情報を入れる
日付の列へ「未定」、金額の列へ「なし」と入力すると、データ型をそろえにくくなります。未確定をどう表すかもルールにします。
見出しの前に説明行を置かない
タイトル、担当者名、注釈などを表の上に置くと、ファイルごとに読み取り位置がずれやすくなります。集計用データは、1行目を見出しにした単純な表へそろえます。
集計対象以外を同じフォルダーへ入れない
フォルダー接続では、配下のファイルも処理対象になり得ます。Microsoftも、対象だけを専用フォルダーへ置き、形式や構造を統一するよう案内しています。
小さく試す進め方
最初から年間分や全店舗分を対象にする必要はありません。
- 同じ形式のファイルを3つ用意する
- 手作業の集計結果も残しておく
- Power Queryで結合する
- 件数と合計金額を手作業の結果と照合する
- 一部の列名や空欄を変えて、エラーの出方を確認する
- 問題がなければ翌月の実務で並行利用する
自動化したから確認しない、ではなく、確認方法まで仕組みに含めることが大切です。更新日時、読み込んだファイル数、明細件数、合計値などを毎回確認できるようにします。
Power Queryが向いている状況
- 同じ形式のExcelやCSVを繰り返し集計する
- 利用者が少なく、Excel内で作業が完結する
- 更新は日次より週次・月次が中心
- 複雑な権限管理を必要としない
- まず手作業を減らし、必要な集計を見極めたい
この段階なら、既存のExcelを生かしながら改善できます。
別の仕組みを考えた方がよい状況
- 複数人が同時に入力・修正する
- 人によって閲覧できる店舗や個人情報を分けたい
- 変更履歴や承認記録を確実に残したい
- 元ファイルの形式が部署ごとに大きく異なる
- 毎日またはリアルタイムに更新したい
- ファイル数や明細件数が増え、更新に時間がかかる
- Power Queryを直せる人が一人しかいない
Power Queryは強力ですが、入力画面、権限管理、承認、監査ログまでをまとめて解決する仕組みではありません。管理対象が増えたら、Excelを完全に廃止するのではなく、入力や試算には残し、原本データの保管と集計をデータベースへ移す方法も検討します。
導入前に決めておきたい運用
- 誰が入力ファイルを作るか
- ファイルの締め切りと確定時刻
- 修正が発生したときの再提出方法
- 列の追加や名称変更を誰が承認するか
- 更新エラーを誰が確認するか
- 集計結果の正しさを何と照合するか
- Power Queryの設定を誰が保守するか
ツールの設定だけでなく、この運用が決まって初めて、毎月安心して使える集計になります。